古い習慣はなかなか消えない: 望ましくない習慣をやめるには

アナベル・ストーン、フィリッパ・ラリー、サリー大学(英国)

 

新しい年の始まりには何かを変えたくなるものです。真夜中の鐘が鳴るのを聞きながら、新しい習慣を身につけよう、悪い習慣を捨てようと決意します。ランニングシューズのほこりを払い、買い物かごに新鮮な果物や野菜を詰め込み・・・「新しい年、新しい私」と思ったことのない人はいないでしょう。しかし1カ月も経つと、ランニングシューズは2回しか日の目を見ず、新鮮な果物は毛羽立ち始めています。なぜでしょう?どうやら悪い習慣が新年までついてきてしまったようです。

心理学者によると、習慣とはこれまである行動を頻繁にしていた状況(きっかけ)に遭遇したときに、自動的にその行動を実行するプロセスのことです。その「きっかけ」とは、ストレスを感じるとチョコレートを食べたくなるというような感情的なものであったり、パブで友人と一緒になるたびにビールを1パイント飲むというような社会的なものであったり、あのコーヒーショップに入るといつもラテを注文してしまうというような物理的なものであったりします。言うまでもないことですが、悪い習慣をなくそうと思っても、その習慣のきっかけに再び遭遇したときに自動的にその行動をしてしまうのを完全に防ぐのは難しいものです (more…)

1回の診療を有意義に: 医療現場における運動の推進

アマンダ・デイリー ラフバラー大学(イギリス)

イギリスとアイルランドでは、Making Every Contact Count(1回の診療を有意義に)というイニシアチブの下、医療従事者と患者の間で毎日何千回も行われる医療相談を健康的な行動変容を促す場として活用する試みを実施しています。 具体的には、Making Every Contact Countでは、医療従事者が日常診療の機会を使って患者に簡単な健康行動変容の介入を容易に実施できるような仕掛けを作っています。Making Every Contact Countのようなアプローチの成功のカギを握るのは、医療従事者が日々の診療の中でこうした話題を積極的に取り上げる意欲があるかどうかです。Making Every Contact Countはすべての人を対象にしており、特定の医療従事者、医療サービス、患者に限定されるものではありません。 したがって、Making Every Contact Countはすべての患者が診療の中でサポートを受けられるようなインクルーシブ・アプローチをとっており、健康格差の縮小につながる可能性があります。 (more…)

What if it comes back? The question that is on the minds of those who experienced cancer treatment and their loved ones

By Gozde Ozakinci, University of Stirling 

Cancer is very much associated with scary statistics. For instance, like the one ‘1 in 2 people will develop some form of cancer in their lifetime’.  But there are encouraging developments too that suggests that cancer survival rates are improving.  The last count in 2018 suggests that there are nearly 44 million people who survived the cancer diagnosis and treatment in the world. This is welcome news to those who have experienced cancer diagnosis and treatment. 

The improvement in survival rates also means that more and more people live with the consequences of cancer treatment. One of these consequences is experiencing fears about cancer coming back. In the literature, it is defined as “fear, worry, or concern relating to the possibility that cancer will come back or progress” and recognised widely as one of the most significant issues that impact on the quality of life of those living after a cancer diagnosis.  (more…)

臓器提供に影響を与える要因を知る

リー・シェパード博士(英国・ノーサンブリア大学)、ローナン・E・オキャロル教授(英国・スターリング大学)、イーモン・ファーガソン教授(英国・ノッティンガム大学)

亡くなった人からの臓器提供によって貴重な命が救われたという美談は枚挙にいとまがありません。実際、1人の臓器提供者(ドナー)は最大9人の人生を変えることができるといわれます。しかし、移植できる臓器は圧倒的に数が足りていません。よって多くの移植待機者が生まれ、中には移植を受ける前に亡くなる人もいます。本記事では臓器提供の意思決定にどのような要因が影響するか考えてみます。

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「ちょっと散歩しない?」―脳卒中後のウォーキングのための二者単位での行動変容支援

ステファン・ドンブロウスキー、ニューブランズウィック大学(カナダ)

死から遠ざかるウォーキング

歩くことは人間の最も基本的な動作のひとつであり、健康への恩恵は数えきれないほどあります。歩けば歩くほど早死にしにくいというエビデンスがあり、死から(少なくともしばらくの間は)遠ざかることが可能であると考えられます。

ウォーキングと脳卒中の関係

運動としてのウォーキングは、成人期の身体障害の原因として最も多い脳卒中を患う人に特に有益です。脳卒中後に定期的に運動すると脳卒中の再発リスクが減るだけでなく、回復を助け、全般的な機能、健康、ウェルビーイングも向上します。しかし、脳卒中患者は、起きている時間の約75%を座って過ごしており、同年齢の健常者と比べて座っている時間が長いです。ウォーキングは脳卒中後の最も実行しやすい運動であり、95%の人が発作後11週間で歩けるようになります。さらに、脳卒中患者にとって、ウォーキングは身近で楽しく、社交的な身体活動として好まれています。では、脳卒中患者にもっと歩いてもらうにはどうすればよいでしょうか。 (more…)

アクセプタンス・コミットメント・セラピー: COVID-19後遺症を抱える人への有望なアプローチとして

エイミー・バラデル レスター大学病院NHSトラスト

COVID-19後遺症とは何か知っていますか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した人々の中には、急性期後にも何らかのつらい症状に4週間以上も悩まされている人がいます。身体的症状(息苦しさ、疲労など)と精神的症状(不安、認知障害など)の両方を経験することが多いようです。このような症状は「COVID-19後遺症」と呼ばれています。

私の経験では

COVID-19後遺症のクリニックで働いた経験から、患者は新たな症状(および症状の結果)をなかなか受け入れることができず、それが自己管理の妨げになっていることがわかりました。彼らは 「COVID-19後遺症」になる前にできていたことや、診断を受けてから自分の人生がいかに悪い方向に変化したかということばかりを口にします。これは、経験の回避(感情、思考、記憶、身体感覚など、望ましくない内的経験を抑制しようとする試みや願望)の表れであり、症状にばかり注意が向いていて症状の役割(自分の行動を変えるための身体指標)を意識しない傾向があることを意味します。これらの経験を受け入れず、今この瞬間を生きることから遠ざかっていると言えます。

さらに、COVID-19で入院した人の25%以上が、退院後6ヵ月経っても抑うつ症状に苦しんでいると報告されています。うつ病は活動の回避(ある活動をしないことを選択すること)と関連していることから、後遺症に悩む人々は自分が大切にしたい行動ができていないと考えられます。 (more…)

行動変容のテクニックを実践する:利用可能なツールのご紹介

マルタ・モレイラ・マルケス NOVA大学(ポルトガル、リスボン)

行動変容プログラムは行動変容のテクニックで構成されます。行動変容テクニックとは、運動量を増やす、禁煙する、服薬を遵守するなど、様々な健康ニーズに応じるために専門家が自由に使えるツールです。一般によく使われるテクニックには、目標設定セルフモニタリング、行動に関する情報提供、感情の管理などがあります。

多くの専門家は、こうしたテクニックをあえて意識することなく実践していることでしょう。しかし、クライエントや患者の行動変容において最大の支援効果を得るためには、行動変容のテクニックを体系的かつ合理的に使用する必要があります(例えば、以前のブログ記事「意味のる目標を設定する方法」を参照してください)。そのために多忙な専門家は面倒な疑問を解決しなければなりません:

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効果的なリスクコミュニケーションは行動変容だけが目的ではありません:個人的なリスク評価について話しましょう

ビクトリア・ウーフ、デヴィッド・フレンチ マンチェスター大学健康心理学センター(英)

従来、医療や健康心理学の分野において、医療従事者は病気の予防を目的として患者に個人的な疾病リスクを伝えてきました。リスクコミュニケーションによって健康行動の変容が促されれば、病気の発症を抑え、治療可能な段階で病気を発見できるはずです。例えば、心血管疾患のリスクを伝えることで、運動習慣や食生活の改善が促され、発症リスクを減らすことができます。しかし、疾病リスクに関する情報提供には考慮したい目的や成果が他にもあります。また、医療従事者と患者や一般市民の目標が必ずしも一致するとは限りません。したがって、リスクコミュニケーションが目指すこととしては、インフォームド・チョイス(情報に基づき患者自らが治療法を選択すること)の促進、適切な感情反応の喚起、行動変容の動機づけなどが含まれます。 (more…)

ジョブ・クラフティングで元気に仕事をしよう

ヤンネ・カルティアイネン &ヤリ・ハカネン、フィンランド産業衛生研究所(フィンランド)

私は仕事のどの部分に対してやる気や魅力を感じ、自分が幸福になるためにとても大事だと思っているのだろう? こうした部分をもっと仕事に取り入れるにはどうしたらよいのだろう?

キャリアが長く専門的な知識も豊富なある看護師は、職場でストレスを感じ、少し退屈し、「マンネリ化」し始めてから、このようなことを自問自答するようになりました。その答えがきっかけとなり、彼女は後輩の指導を始め、仕事に対する能力や同僚とのつながりをより強く感じられるようになるとともに、日々のルーティンに再び意味を見出すことができるようになったのです。仕事のやり方を少し変えただけで彼女の仕事上の幸福感は向上し、しかも病院の運営と効率に支障はありませんでした。むしろ、彼女の同僚たちは、このメンターシップを通じてとてもよくサポートされていると感じ、職場全体の雰囲気も良くなりました。 (more…)

健康改善を目的とした研究と実践の連携構築に向けて

 2022-10-06公衆衛生利害関係者 

キャサリン・ブラウン、ハートフォードシャー大学 (イギリス)

このブログは、私が大学と地方自治体の公衆衛生部門の両方に籍を置き、研究、介入プログラム開発、評価スキルの活動を実践した経験を一部用いています。

あなたがヘルスサービスの委託、管理、設計、提供のいずれに関わっているとしても、サービスが目標を達成するためにはユーザーに変えてもらいたい動作が少なくとも 1 つはあると思います。これは、サービスの対象となる疾患や、伝染性 (インフルエンザ、Covid-19、結核、性感染症など) または非伝染性 (心臓病、COPD、2 型糖尿病、肥満など) に関係なく、人々の行動が病気の全体的な負担感に影響するからです。しかし、病気になるのは本人のせいで、自分の健康と幸福を守る責任は個人にあると言いたいのではありません。まったくの逆です!私たちの健康は、遺伝的、生物学的、社会的および環境的要因からも影響を受けます。健康の改善と維持のためにはこれらのファクターを考慮することも重要です。

とは言え、疾病予防には私たちの行動が重要なカギを握っていることはCovid-19パンデミック下の世界中の反応を見ても明らかです。社会的/物理的に距離を保つ、定期的な手洗い、手指の消毒、手で顔を触らない、マスクの着用、感染の症状が疑われたら自主隔離、特定の旅行先から戻ったら検疫などが必須とされました。これらのことを十分に多くの人々が実践すると、ウイルスの拡散が最小限に抑えられ、健康状態の改善が見込まれます。

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