MyLifeTool:長期的な健康問題の自己管理に向けた、患者中心で全人的なアプローチ
ステファニー・キリンチ博士、テスサイド大学(英) ジョー・コール(ティーズバレー・ダラム・ノース・ヨークシャー神経学連盟、英) 長期的な健康問題は、世界的に高い有病率と疾病負担を伴い、とりわけ障害調整生存年に大きな影響を及ぼしていることから、各国の医療制度にとって重大な課題となっています。これらの疾患は健康関連の生活の質を著しく損ない、一般集団と比較して不安やうつ病の罹患率が高いことも明らかになっています。 MyLifeTool は、糖尿病、多発性硬化症、慢性疼痛、喘息、不安障害、神経発達症、脳損傷後遺症、線維筋痛症など、長期的な疾患を抱える人のための自己管理ツールです。このツールは、長期的な疾患を持つ当事者とNeuro Key のメンバー、そしてテスサイド大学の心理学者らとの共同開発によって生まれました。開発の基盤には、患者中心の非指示的な視点で自己管理をとらえる独自の自己管理フレームワークがあります。プロジェクトの中心には常に慢性疾患を抱える当事者の存在があり、MyLifeTool がどのような形になるかの意思決定や名称選定に至るまで、主導的な役割を担ってきました。 自己管理へのアプローチ 長期的な疾患に対する自己管理の取り組みは、しばしば医療的な成果や管理手法に重きを置きすぎて、行動変容ばかりに注目するあまり、社会的・対人関係的な文脈が軽視されがちです。これに対し、長期的な疾患の自己管理は、生活状況や症状に応じて柔軟に展開される、生涯にわたるプロセスであると捉えることができます。そのため、従来の指示的な介入から、個人が自己管理に必要な資源を発見し、育てていくことを支援するアプローチへの転換が提案されています。このような考えに基づき、私たちは自己管理を「人生の意味や目的を見出し、それを維持していくための旅路」と捉えています。それは、患者本人が自らの視点で取り組み、自分の生活や目標、ニーズ、疾患の経過に応じて調整しながら進めていく継続的なプロセスです。自己管理とは「診断名」に従うことではなく、「その人自身」を中心に据える営みであるべきなのです。こうした理由から、MyLifeTool では、どのような自己管理戦略が自分にとって有効か、または有効でないのかを患者自身が振り返るプロセスが重視されています。 MyLifeTool の構成 MyLifeTool は、5つの小冊子で構成されており、それぞれにポジティブ心理学に基づくさまざまなワークが盛り込まれています。これらのワークを通して、人々が自身の強みを見つめ直し、活用することを促しています。研究によれば、目的意識をもって生きることは、長期的な疾患を抱える人にとって重要であり、個人の成長や健康状態の改善とも関連していることが示されています。 Book 1: “Me and my condition(私と私の病)”は、「自分自身をより前向きに捉える」ことをテーマに、自分のアイデンティティに焦点を当てています。冊子では、「自分は病気によって定義される存在ではない」と認識し、自分に対して優しく接することの重要性が強調されています。あわせて、「自分とはどのような人間か」「自分にとって大切な価値観とは何か」「自分にどのような期待を持っているのか」といった問いを通じて、自己理解を深めるためのワークも盛り込まれています。 Book 2: “Embracing my body( 自分の身体を受け入れる)”では、自己管理プログラムでよく取り上げられる「計画的な行動」や「ペーシング(活動の配分)」といった戦略に焦点を当てています。ワークを通じて、自分の身体の声に耳を傾けることを学び、無理をしたときに現れるサインに気づきやすくなります。また、自分のエネルギーレベルを上手に調整し、日々の活動を無理なく続けるための工夫について考えることができます。 Book 3: “Taking charge(主体性を持つ)”は、自分の強みに目を向け、レジリエンス(回復力)を育て、調子の良い日をより有効に活かすことを目指しています。自分の疾患についてより深く理解し、それが日常生活の中でどのような意味を持つのかを見つめ直すことで、より前向きに自己管理に取り組めるようにします。また、目標設定や自分の強みを再確認するためのワークも用意されています。 Book 4: “Connecting with others(他者とのつながり)”では、支援を受けることの大切さと同時に、他者を支えることが、人生の意味や目的を高める効果があることに着目しています。ワークを通じて、家族や友人だけでなく、医療者やその他の専門職に対して、自分のニーズをどのように伝えるかを考える内容となっています。 Book 5: “What’s important […]
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