ゾフィア・シュチュカ SWPS大学(ポーランド)/ディーキン大学(オーストラリア)
座位行動:単なる「運動していない」状態ではない
身体活動を増やすことの健康効果は広く知られています。しかし、私たちは「座位行動」にも同じくらい注意を向けているでしょうか?
座位行動とは、日中、座ったり横になったりするなど、身体がほとんどエネルギーを消費しない状態のことを指します。重要なのは、座位行動は身体活動量が少ないことと同じではない、という点です。たとえば、毎朝30分ジョギングをしていても、その後の時間の大半を職場や自宅で長時間座って過ごしている場合があります。これは、定期的な運動をしているにもかかわらず長時間座り続ける生活を送っている状態であり、「アクティブなカウチポテト(活動的な座りがち生活者)」現象と呼ばれることがあります。世界保健機関(WHO)の最新ガイドラインでは座位行動を減らすことと身体活動を増やすことはどちらも重要で、両方合わせて取り組むべきものとされています。
座位行動に関連するリスク
仕事中、電話中、食事中、移動中、そしてSNSを使う時間など、私たちは多くの場面で座っています。データによると、たとえば一般開業医などの医療従事者は、通常の勤務日で10.5時間以上座っていることがあると示されています。この数字は軽視できません。長時間座ることは、心血管疾患、糖尿病、いくつかの種類のがん、うつ病など、多くの健康問題のリスクを高めることが知られています。あなたは1日のうちどれくらい座っているか、そしてどの程度その座り時間を中断しているか、考えたことはありますか?また、家庭や職場であなたが支援している人たちはどうでしょうか?これらは、考えてみる価値のある問題です。
なぜ医療者と患者にとって重要なのか?
座る時間や動く頻度は、あなた自身の健康に影響するだけではなく、患者があなたの健康指導をどう受け止めるかにも影響します。研究によると、患者は医療従事者が活動的であると感じると、自分も活動的になれるという自信を持ちやすいことが示されています。多くの人にとって医療従事者は重要なロールモデルなのです。あなたが座りっぱなしの時間を減らしたり、短いアクティブ・ブレイク(短時間だけ体を動かす休憩)を挟んだりすることは、自分の健康を守るだけでなく、患者に対してより健康的な生活習慣のモデルを示すことにもつながります。
たとえあなたが日中よく動く仕事をしていたとしても、患者に座位行動を減らすよう、はっきりと伝えることが重要です。なぜなら、多くの大人や子どもが覚醒時間の大半を座って過ごしており、その時間は年々増加している一方で、この問題への社会的認知はまだ低いままだからです。
「座る」を「動く」に置き換える
座る時間を減らすために、日常の中で座ることを動くことに置き換える簡単な方法がたくさんあります。また、こうした工夫は、親しい友人や恋人、家族と一緒に行うほうが続けやすいことも示されています。小さな工夫が大きな効果を生みます。たとえば、通勤の際にバスを1つ手前の停留所で降りる、家族と過ごす時間をテレビの前に座る代わりに、より活動的に過ごす、などがあります。そして、座らなければならない場合でも、短い休憩を挟んで軽く歩いたりストレッチしたりするだけで、大きな違いが生まれます。椅子から数分立ち上がるだけでも、集中力、気分、生産性が改善します。さらに、頻繁にアクティブ・ブレイクを取ることは、ストレス、眠気、痛みや身体的不快感、心血管リスク、さらには食後2時間血糖値の低下にも関連することが示されています。
座り方の違いが健康への違いを生む
たとえ2人が同じ時間だけ座っていたとしても、その座位時間がどのようなパターンで積み上げられるかは大きく異なります。そして、その違いは健康に影響します。加速度計を用いた研究では、座り方の違いとして2つの行動パターンが示されました。「プロロンガー(Prolongers)」は1日の中で長時間連続して座り続け、休憩は少なく短い傾向があります。「ブレイカー(Breakers)」は電話中や作業の合間などに頻繁に立ち上がります。研究者たちは、座る時間をより頻繁に中断する人ほど、総座位時間や中~高強度の身体活動量にかかわらず代謝関連の健康指標が良好であることを発見しました。特に興味深いのは、休憩回数が最も多い上位四分位(最頻繁に中断するグループ)の参加者は、休憩が最も少ない下位四分位(ほとんど中断しないグループ)の「プロロンガー」と比べて、ウエスト周りが約6cm小さかったことです。
この分野の研究はまだ初期段階にあるため、座位をどの程度の頻度で中断すべきかについて公式の推奨基準はありません。しかし現時点のエビデンスは、およそ30分ごとに短い休憩を取ることが有効である可能性が示唆されています。推奨される身体活動量を満たしているかどうかにかかわらず、座る時間を減らし、短い活動休憩を生活の中に取り入れることは、あなた自身にも、そしてあなたが支援する人々にも意味のある変化をもたらすでしょう。
実践に役立つヒント
ここでは、職場と家庭で座る時間を減らすための方法を紹介します。
できる限り座りっぱなしを中断する:臨床現場やデスクワークでは、長時間座り続けることがよくあります。しかし、短時間の動き、立ち上がり、ストレッチ、短い散歩でも、長時間座りっぱなしの状態を中断する効果があります(例を参照)。
すでに行っている活動に「動き」を組み込む:運動は特別なタスクとして行う必要はありません。電話中に歩く、患者間の移動時に意識的に歩く、コーヒーを取りに行く際に少し遠回りするなど、小さな積み重ねが1日の中で大きな違いを生みます。
軽い作業は立って行う:メモを読む、メールを確認する、テレビを見るといった活動は、必ずしも椅子に座る必要はありません。ノートPCを高い位置に置く、スタンディングデスクを使うなど、自然に立って行える環境を整えることが有効です。
日常の活動を「動く機会」として利用する:家事、買い物、余暇時間の中には、座る時間を軽い活動に置き換えられる機会が多くあります。階段を使う、短い距離なら歩く、テレビを見ながら身体を動かすなど、簡単に取り入れられる方法があります。
動きを促す環境を整える:職場や家庭の環境を少し工夫するだけで、自然と動きが増えます。物を手の届かない場所に置く、立ち上がるリマインダーを設定する、簡単な運動をあらかじめ決めておくようにすると、体を動かしやすくなります。


