自分を変えるのは、自分で! 短期の思考介入

主観的な幸福は、私たちが生まれ持ったもの、生活の中で出会う状況、そして(幸運なことに!)意図的な行動によって決まります。これまでに多くの研究者が私たちの心理的機能を効果的に高める方法を検討してきました。中でも短期の思考介入(または肯定的評価)は心理的機能をポジティブに変容させてくれるツールの1つです。

短い文章のタスク(感謝のリストや手紙など)は心理的な幸福感を高めることが研究で示されています。87か国の大規模なマルチラボ研究では、簡単な再評価法(状況の感じ方を変える、または状況の肯定的な側面に注意を向ける)が、COVID-19パンデミックの間にポジティブな感情を高めたことを報告しています。ストレスを感じやすいイベントについてよく考えてみることは、そこからメリットを引き出すのに役立ちます。イベントの評価を行う間に、人は自分が置かれている状況の良い面について考えることができるのです。

心理的欲求の充足度合いを確かめることで主観的な幸福を高める

パンデミックの間、私たちの研究グループは、オンラインでの短い介入が主観的な幸福感を高めるかどうかを調べました。特に、COVID-19流行下で制限される基本的な心理的欲求(すなわち、自律性、関連性、有能性)に焦点を当てました。自律性の欲求は選択と自由の感覚に関連し、有能性の欲求は目標を達成できるという感覚、関係性の欲求は親しい人とつながっているという感覚に関連しています。自己決定理論によれば、これらの基本的な心理的欲求を満たすことは人が健全に機能するうえで不可欠です。私たちの研究で、基本的な心理的欲求が満たされていると感じると、人は精神的幸福を手にすることが確かめられました。

追跡調査では、パンデミックにより生活に制約があった中でも、自律性、有能性、および/または関係性の感覚を感じることができた状況について書いてもらいました。この短い介入により、介入参加者は関係性の感覚を強め、知覚されるストレスを低下させ、対照群と比べて精神的幸福感が高まりました。このような短くて簡単なオンラインタスクは、人々の気分を良くするのに役立つと考えられますが、しかしプラスの効果がどれくらい続くかは今後の研究が待たれるところです。

 

仕事のやりがいとワークエンゲージメントを高める

別の研究で、オンラインの短期介入が職業生活へのポジティブな適応を後押しできるかどうか調べました。適応の指標としてワークエンゲージメントと仕事のやりがいに焦点を当てました。ワークエンゲージメントは、仕事への献身、没頭、活力の感覚として説明されることがよくあります。高いワークエンゲージメントは、パフォーマンスの向上、職務満足度の向上、抑うつ症状の軽減など、個人と組織の両方にメリットがあります。同様に、仕事のやりがいは、低い不安感、高い幸福感など、仕事に限らずさまざまな心理的メリットをもたらします。

これまでの研究により、仕事のやりがいに影響するいくつかの要因が示唆されています(例えば、より大きな目的を意識する、他者を助ける、自己啓発、お金を稼ぐ、などです)。これらの要因は、自己志向と他者志向に分類できると考えました。そして、自己志向または他者志向のやりがいを評価するという意味への介入が、仕事のやりがいやワークエンゲージメントを高めるか検証しました。その結果、従業員に仕事の意味についてどう考えているかを書いてもらうと、対照群(仕事でどのような機器を使用しているか説明する)と比較して、仕事へのやりがいやワークエンゲージメントが向上しました。続いての研究では、より大きな目的を意識する、またはキャリアを向上させるかのどちらかをやりがいとして書いてもらい、仕事で使う機器を書いてもらった人(対照群)と比較しました。自分の仕事が他者にどのような利益をもたらすかを書いた人は、やりがいが増し、その結果、ワークエンゲージメントも高まりました。

以上のことから、自分で、または他者の主導による短い思考介入は心理的幸福を少なくとも短期的には向上させる有望な方法と言えます。自分のリアルな生活場面を介入の対象として提供しているため、介入は個人の実情に合わせて調整され、結果として高い効果が期待されます。クライアントの主観的幸福感を改善する、または仕事のやりがいとエンゲージメントを高めるために、以下に示すライティングタスクをクライアントに提供してみてはいかがでしょうか。

 

実践に役立つヒント

  • 主観的幸福感を高め、ストレスをと低減させるため、次のどれかまたはすべてを感じた状況についてクライアントに書いてもらいます:
    • 自律性の感覚:今取り組んでいることに選択と自由の感覚を感じたとき。
    • 有能性の感覚:目標を達成できると感じたとき。
    • 関係性の感覚:自分のことを気にかけてくれる人や気にかけている人とのつながりを感じたとき。
  • 職場環境では、仕事の意味ややりがいを書いてもらいましょう。または、自分の仕事がより大きな目的にいかに寄与しているか自問してもらいます。

 

[translated by] Naomi Yoshitake

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